「LSDトリップはどんな感じか?」というかなり初期の記事で私はサイケデリックトリップの流れと特徴を詳細に記述しようと試みましたが、時間が経ってから次第に気付いてきたことがあります。人によってトリップが違うということです。
 トリップそのものが違うかどうかは確かめようがありませんが、何に関心を持つか、何を重要視するかと、反対に、何に無関心で何を重要視しないかが人によって明らかに違う。 
 この傾向の違いについて、「自分が正しい」と主張する人同士で争うのは意味がないだろう。「知識や経験がない人たちが間違っている」と言ってマウントを取るのは簡単だが、そのような考え方が物事の本質を掴んでいるとは思えない。自分中心の考え方を一度放棄しなければ全体像はなかなか見えてこない。 
 そこで私はタイプごとに傾向の違いがあるという仮説を立てることにしました。そしてそのタイプごとの違いを知るためにアンケートを実施しました。
 結果として、仮説を十分に検証、証明できるほどのデータが手に入ったかどうかは、読者の皆様方の判断に委ねます。

 タイプ別に集計したのと、質問項目が多すぎたことや回答形式を煩雑にしたことで、アンケート結果を分析するのはかなり骨の折れる仕事でした。
 全結果を公開したところでただの大量の数字のカオスだけになるので、有意義と言えるような「差」が出たところをメインに紹介していこうと思います。
 回答して頂いた皆様に感謝いたします。



 アンケート
 タイトル・タイプとトリップ傾向の研究 
 サイケデリックス経験者向けのアンケートです。それ以外の方の回答はご遠慮頂きますようお願いします。全16問

 ・タイプ別の集計
 内向・思考 外向・思考
 内向・感情 外向・感情
 内向・感覚 外向・感覚
 内向・直感 外向・直感

 タイプの選択方法(以下実際にアンケートに使用したもの。※主な参考文献はユング『分析心理学』)

 『このアンケートはユングのタイプ論に従って、8タイプにわけて回答して頂きます。
人によってはタイプの選択が難しいです。すぐわかる人もいれば、強引に決めなければいけない人もいます。タイプは時と場合によって、生きている過程でも変化していくことがあります。どちらかはっきりしない、中間くらいに感じる方は「心の声(?)」に従って決めてください。

・内向と外向について・
 内向外向は、単純にコミュニケーション能力の高低を指すのではなく、意識作用の向きを表す。誰でも内向性と外向性の両方を持っていますが、どちらがより分化・発展しているか。
 内向型は主体(自分の内面)に関心をもち、外向型は客体(他人がどう思うか)に関心がある。
 内向型は自分の考えを貫くために他人の考えの影響から逃れようとする。彼にとって他人とは内的状況を狂わす「異物」なのだ。外向型は他人が何を考えているかのほうが重要と感じるので、彼にとっては自分の内面の方が、外的状況を狂わす「異物」なのだ。
 内向型は熟慮に長けるが、考えるぶん行動が遅れる。考えてから行動する。外向型は行動力に長けるが十分に考えていない傾向がある。行動してから考える。
 内向型と外向型はお互いの弱みを補い合うため良い仲を築きやすく、理想のカップルでもある。外向型は初対面の人ともすぐ仲良くなりやすい。

・四つの心理機能・
思考(考える・論理)感情(判断・価値評価)
感覚(感じる・局所知)直感(閃き・全体知)

・思考タイプと感情タイプについて・
 思考と感情は相反するもので、両方を極めることは原理的に出来ない。思考するときは感情を排除しなければならず、逆に感情価によって動く人は上手に思考を捨てなければいけないからである。「考えるな、感じろ」なのか、「感じるな、考えろ」なのか。
 思考と感情は誰もが持ち合わせているが、どちらかが優先的に分化、発達している。それがあなたのタイプであり、優越機能である。片方が優越機能であれば、もう片方は影に隠れている劣等機能になる。
 一般に、インテリはほとんどが思考タイプだが、だからといって決して感情タイプの知性が劣るというわけではない。「気持ちが一番大事なのだ」と思う人は感情タイプである。
 思考機能が分化発展しすぎている人は感情が未分化になるので、彼は情動的になってしまうと、考えることで感情から抜け出すことができない。思考タイプの人はなかなか感情から抜け出せない。感情タイプの方はというと、自分の考えを捨てられない。

・感覚タイプと直感タイプについて・
 思考と感情がお互いに相反しあう縦軸だとすると、感覚と直感もまたお互いに相反し合う横軸ということになります。
 さきほど、「考えるな、感じろ」といいましたが、ここで言われる「感じろ」とは必ずしも感情だけのことではありません。感覚や直感も含まれます。
 感覚タイプの人の目線を観察すると、一点に集中していると言われます。彼は研ぎ澄まされた感覚で世界を見ています。職人肌であることが多い。直感タイプのほうは、全体を見ていて細かいところは見ていない。雰囲気で物事の本質や全体像を掴むのに長けている。
 ある事物を注意深く見ている時にはまわりのものを同時に見ることが出来ないので、感覚と直感は相反するわけです。また、感覚は現実認識、直感は現実脱却の態度と考えてもよい。
 感覚タイプの人は、事物をありのままに観察しますが、直感を持ちません。彼は現実が大事で、現実がないと発狂します。直感タイプほうは逆に現実に悩まされており、現実的な立場に立つことに失敗します。彼にとって現実は抜け出さなければいけない壁になります。直感は無意識を介したもので、現代人にはおそらくかなり失われており、今では直感を心理機能であると認めない人もいます。


・参考までに、タイプの分化差(読まなくてもいいです)・
 欧米から見て中国人は、直感を発達させた民族だと言われています。中国やネイティブアメリカンの哲学や宗教を見れば、直感がもたらすものが分かります。彼らは論理による証明ではなく直感的理解を重視します。
 ギリシアやインド人はかなり論理的だったので思考優位の文明でした。これは彼らの言語の文法の複雑さによるものだとも言われております。中国語のほうはというと、高い論理性はないが、漢字の象徴性によってイメージを伝えることに長けます。中国人は論理学を発達させませんでしたが、中国語は詩には最も向いている言語と言われます。

 人口の中での内向性と外向性の比率も、民族や時代ごとに差があると思われます。内向型と外向型ではかかりやすい神経症も違うといわれ、内向型は神経衰弱になりやすく、外向型はヒステリーになりやすいという話がある。河合隼雄は、フィリピンでフィリピン人の外向性が高いことに驚いたが、興味深いことにフィリピンではヒステリーの症例が多く、神経衰弱が皆無に等しいと言っている。』


 


 質問内容

 1・サイケデリックスは自分にとって有用、大切だ(選択肢回答)
 2・クラブやパーティーでトリップするのは愚かだ(五段階)
 3・無音の暗闇で一人でトリップするなどあり得ない(五段階)
 4・トリップは考えるためのものだ(五段階)
 5・トリップは感じるためのものだ(五段階)
 6・他人と一緒にトリップする(選択肢)
 7・トリップシッターをした・された(選択肢)
 8・深く行きたいなら、一人でトリップしたほうがいい(選択肢)
 9・トリップは遊びではない(五段階)
 10・自分や他人の安全を重視している、安全がなによりも大切だ
 11・トリップの目的はどれであるべきか(当てはまるものを全て)(チェックボックス)
 12・トリップの目的はどれであるべきか(最も重要なものを一つ)(選択肢)
 13・トリップは現実か(選択肢)
 14・トリップによって身についたものはありますか(チェックボックス)
 15・霊的なものやスピリチュアル思想を信じますか(選択肢)






 集計結果

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 回答者数・102
 (バグか、一部質問を未回答の人がいるのか不明ですが、回答者数が103と出ているところや、票数合計が104になる時がありました。細かいところは気にせず、102票ということにしておきます)

 内向・思考 35 
 内向・感情 12
 内向・感覚 11
 内向・直感 22
 外向・思考 5
 外向・感情 9
 外向・感覚 4
 外向・直感 4

 内向合計80(79%)外向合計22(21%)

 思考型40 感情型21 感覚型15 直感型26


 ・内向が全体の3/4、外向が1/4という傾向は、回答を募集し始めた直後から締め切るまで一貫して保たれていた。これが日本人全体の傾向なのかサイケ使用者の傾向なのかは分からないが、たぶん日本人全体の傾向なのではないかという予感がする。
 見ての通り、外向型の票数は非常に少ないので、有意義な研究をするにはデータが足りないと思われる。外向型の集計結果は特に過信しすぎないように注意したい。
 ・余談だがこのブログの著者のタイプは内向思考である。なのでこのブログの記事も基本的には内向性と思考性が優位になっている。




 1・サイケデリックスは自分にとって有用、大切だ(選択肢回答)

 五つの選択肢の全タイプ合計票数

 有用だが、リスクは大きい−57
 有用で大切、奇跡の薬だ−19
 有用かは分からないが、大切だ−20
 有用ではない−2
 分からない−5

 タイプごとの差に特に目を見張るものはなかったが、唯一「有用でない」と回答していた二人は両方内向直感型であった。偶然なのかは分からない。




 2・クラブやパーティーでトリップするのは愚かだ(五段階)

 五段階回答、全タイプの合計票数

 1−22(当てはまる)
 2−27
 3−26
 4−17
 5−11(当てはまらない・クラブこそが最高)

 この質問は外向型がクラブを好むという仮説を証明するつもりで設けたが、タイプごとに大きな違いは認められなかった。外向型で「1」と答えた人がおり、内向型で「5」と答えた人もいる。全体的にばらつきがあった。
 それでも、全体で見ると内向・外向ともに思考型が最もクラブに厳しかった。




 3・無音の暗闇で一人でトリップするなどあり得ない(五段階)

 
五段階回答、全タイプ合計票数

 1−12(当てはまる)
 2−7
 3−27
 4−36
 5−20(当てはまらない・無音の暗闇こそが正しいトリップ)

 かなりばらつきのある回答で、タイプごとの大きな差は見つからない。
 最も多く1(当てはまる)と答えたのは内向・外向共に感情型である。内向感情、外向感情どちらもぴったり三分の一が「1」と答えている。「1」と答えた12人のうち7人が感情型だった。





 4・トリップは考えるためのものだ(五段階)

 
五段階回答、全タイプ合計票数

 1−26(当てはまる)
 2−18
 3−26
 4−12
 5−10(当てはまらない)

 この質問は思考型と感情型の考える傾向の違いを調べるのが目的だったが、意外にも感情型で「1」と答えた人が多いので、感情型は考えないというのは間違いだということは明らかである。
 全体的に考える傾向は高いように見える。


 5・トリップは感じるためのものだ(五段階)

 五段階回答、全タイプ合計票数
 
 
1−56(当てはまる)
 2−21
 3−18
 4−5
 5−4(当てはまらない)

・全体的に感じる傾向は大きい。が、内向型4タイプの平均点を見ると、思考型が一番感じていないのが認められる。
 平均点(1〜5点)
 内向思考−2.2
 内向感情−1.25
 内向感覚−1.27
 内向直感−1.8

 しかし、外向思考は5人中5人が「1」と回答したので平均1点となった。・・外向思考型は内向思考型と大きく違うのか?それとも、外向思考型と自己判断した人が本当は感情型に近い人たちだったのか?分からない。タイプの自己診断は絶対的に信頼できるものではないということをお忘れなく。





 6・他人と一緒にトリップする(選択肢)

 選択肢、全タイプ合計票数

  ある(毎回)−21
 ある(たまに)−22
  ある(数回)−30
      ない−24

・「ない」と答えた割合、タイプ別
 内向思考−36% 
 内向感情ー8% 
 内向感覚−18% 
 内向直感−18%
 外向思考ー25%
 外向感情−11% 
 (外向感覚と外向直感は票数少ないため省略)
 「ない」ともっとも多く答えたのは思考型で、最も少ないのは感情型だった。





 7・トリップシッターをした・された(選択肢)

 選択回答、全タイプ合計票数

    した、された−30
  した、されてない−19
  してない、された−16
してない、されてない−37

・特に興味深い傾向は認められず。




 8・深く行きたいなら、一人でトリップしたほうがいい(選択肢)

 選択回答、全タイプ合計票数

 深く行きたいと思ったことがない−3
 シッターを絶対につけて一人で−25
 一人で(シッターはいなくてもいい)−50
 複数人で−2
 分からない−11


 
 9・トリップは遊びではない(五段階)
  
 五段階回答、全タイプ合計票数

 1−26(当てはまる)
 2−18
 3−38
 4−13
 5−8(当てはまらない)

 各タイプの平均点(1〜5点)
 内向思考−2.4
 内向感情−3.0
 内向感覚−2.9
 内向直感−1.9

 ・一番真面目なのは思考型と思いきや、直感型だった。




 10・自分や他人の安全を重視している、安全がなによりも大切だ

 五段階回答、全タイプ合計票数

 1−46(当てはまる)
 2−19
 3−18
 4−11
 5−5(当てはまらない)

・全体的に安全を大事にする傾向は高いようだ。全タイプ平均点は2.02。

 各タイプの平均点(1〜5点)

 内向思考−1.9
 内向感情−3.0
 内向感覚−1.3
 内向直感−1.9
 外向思考−1.8
 外向感情−2.5
 (外向感覚と外向直感は票数少ないため省略) 
 内向、外向ともに感情型の安全意識が最も低い。
 



 11・トリップの目的はどれであるべきか(当てはまるものを全て)(チェックボックス)

 
全タイプ合計、順位順
 自己分析−84%
 楽しみ−66%
 視覚や様々なサイケデリアに圧倒される−64%
 冒険・探求−63%
 愛や一体感の獲得−54%
 悟り・宗教体験−51%
 自我(エゴ)を取り去る−42%
 現実逃避−25%


 ○タイプ別「自己分析」と答えた割合
 内向思考−80%
 内向感情−66%
 内向感覚−72%
 内向直感−86%
 外向全タイプ−100%
 ・外向型は100%が自己分析と答えているのは注目に値する。
 ・内向型は直感−思考−感覚−感情の順位になっているが、これは「トリップは遊びではない」の回答と同じ順位。


 ○内向型の回答で、パーセンテージ(%)が『思考≧直感≧感覚>感情』というパターンになるものがいくつも確認された。この法則に従った例は
 冒険・探求(86−72−72−66)
 悟り・宗教体験(58−50−45−33)
 現実逃避(33−18−18−16)
 自我(エゴ)を取り去る(50−50−45−8)


 ○内向感覚型は「楽しみ(90%)」「視覚や様々なサイケデリアに圧倒される(81%)」のチェック数が一番多かった。感覚型の特徴が現れていると思われる。

 ○「楽しみ」と答えた割合
 内向思考−66%
 内向感情−75%
 内向感覚−90%
 
 内向直感−45%
 外向思考−40% 
 外向感情−88%
(外向感覚と外向直感は票数少ないため省略)

 

○「愛や一体感の獲得」と答えた割合
 内向思考−52%
 内向感情−41%
 内向感覚−63%

 内向直感−68%
 外向思考−40% 
 外向感情−55%


 12・トリップの目的はどれであるべきか(最も重要なものを一つ)(選択肢)
 
11と同じ選択肢です。

 全タイプ合計票数、順位順
 冒険・探索−32 
   自己分析−30
 楽しみ−13
 悟り・宗教体験−12
 愛や一体感の獲得−10
 視覚や様々なサイケデリアに圧倒される–5
 現実逃避−1
 ・全タイプにおいて、自己分析と冒険・探索と答える率が高かった。
 「自己分析」と答えた率が最も多いのは外向感情型(44%)、次が内向感情型(41%)。一つ前の質問では内向感情型が「自己分析」と答えた率が一番低いので興味深い。ある人はある、ない人はない、ということか。



 13・トリップは現実か(選択肢)

 選択回答、全タイプ合計票数

 幻覚は現実と同じくらいの価値がある–63
 幻覚世界は現実以上に価値がある–10
 幻覚世界はより高次な真実の世界である–14
 所詮は幻覚で価値はない –6

 「幻覚世界はより高次な真実の世界である」と答えた割合、タイプ別
 内向思考−11%
 内向感情–16%
 内向感覚−9%
 内向直感−18%
 外向思考−0%
 外向感情–11%

 どのタイプも「幻覚は現実と同じくらいの価値がある」と答えた率が高い。最も多いのは外向思考型(100%)、内向感覚(91%)、その次は内向思考と内向直感(72%)




 14・トリップによって身についたものはありますか(チェックボックス)

 
この回答を分析する際気をつけたいのは、おそらく「もとから持っている能力」は出てこない(かもしれない)ということだ。なので自分のタイプに合った能力ではなく、自分のタイプと相反する能力の方が結果として出てくるのではないかと思われる。
 
 全タイプ合計割合、順位順
 自分の精神を理解する能力–58%
 物事の本質や現実を見抜く能力−41%
 より高度で抽象的な思考能力−32%
 他人の感情を理解し共感する能力–31%
 神秘的な直感やスピリチュアリティ–22%
 なし–14%


 各項目のタイプごと順位
 「なし」上位3タイプ
 内向感情−33%
 内向思考−16%
 内向直感–13%

 「自分の精神を理解する能力」
 内向思考−47%
 内向感情–41%
 内向感覚−45%
 内向直感−72%
 外向思考−100%
 外向感情–77%

 「物事の本質や現実を見抜く能力」
 内向思考−38%
 内向感情–25%
 内向感覚−18%
 内向直感–40%

 「より高度で抽象的な思考能力」
 内向思考−41%
 内向感情–8%
 内向感覚−27%
 内向直感–45%

 「他人の感情を理解し共感する能力」
 内向思考−22%
 内向感情–25%
 内向感覚−36%
 内向直感–27%

「神秘的な直感やスピリチュアリティ」
 内向思考−14%
 内向感情–25%
 内向感覚−18%
 内向直感–36%
・思考型が最も少なく、直感型が最も多いのは肯ける。




 15・霊的なものやスピリチュアル思想を信じますか(選択肢)

 
選択回答、各タイプ合計票数
 信じる–15
 関心はある–37
 どちらとも言えない–27
 信じないー24

 「信じる」と答えた割合、タイプ別
 内向思考−16%
 内向感情–8%
 内向感覚−18%
 内向直感–18%
 ・内向型で最も多く「信じる」と答えたのは直感型と感覚型だが、相対的に多いとしてもタイプ全体の中では2割も満たない。直感型イコールスピリチュアルな人だ、と短絡的に考えてはいけないようだ。


 「信じない」と答えた割合、タイプ別
 内向思考−25%
 内向感情–33%
 内向感覚−18%
 内向直感–13%
 外向思考−40%
 外向感情–22%
・内向直感が一番少ない。